2010.11.03 BLOG
神の手の暖かさ
救急隊員の心臓マッサージによってかろうじて上下する胸、幾枚かの毛布にまとわれ搬送された夜間救急病院で、3時間後にようやく大事に陥らなかったと判別できたものの明らかな急性心筋梗塞の発作、それに続くカテーテル治療を余儀なくされた5年前に比較すると、事前の検査によって決定された今回の入院・手術はその突然性・緊急性において数段気持ちの穏やかなものはあったが、午前8時30分に手術室に運ばれ、予定の4時間を一時間以上長く控え室で待ち続けることになったその緊張感・不安感は、執刀医がかかる分野(人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス手術)の権威者として名高い浅井徹先生であったとしても、やはり動脈瘤の切除を伴う3か所の冠動脈バイパス形成という深刻な手術の前には自らの手では鎮めようのないくらい大きいものであった。
然しながら、なお1時間近く待つのち漸く呼ばれた術後説明室で、思いがけぬ暖かさと穏やかさで満面近くに笑みを湛えた神の手に握手を求められた瞬間、それまでの喩えようのない焦燥感も一度に吹き飛ぶかのようであった。
直後の集中治療室で普段とほとんど変わらない妻の寝息に接したとき、それはさらにいっそう強く確信に変わり、今度はこちらから求める神の手に、深く肯きながら応えてくれる名医とともに大きな安堵感を抱きながらI.C.Uをあとにすることができた。
<杉本>
浅井 徹 Dr